2023年ノーベル医学賞|たきもと内科クリニック|京都市山科の内科・消化器内科・糖尿病内科

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2023年ノーベル医学賞|たきもと内科クリニック|京都市山科の内科・消化器内科・糖尿病内科

2023年ノーベル医学賞

皆様、こんにちは。道を歩いていると木々が少しずつ紅くなりはじめ、秋を感じる良い時期になりましたがいかがお過ごしでしょうか。本日は先月にコロナワクチンの開発、実用化でノーベル医学賞をとられたカタリン・カリコ氏とコロナワクチンのお話をさせていただきます。ノーベル医学賞は、仕事柄毎年注目はしています。数年前は、iPS細胞の山中伸弥教授、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ)の本庶佑教授もノーベル医学賞とられましたね。この分野は日本人がまた取ってほしいなと祈念しておりますが、今の日本の研究レベルの低下が叫ばれていることや国家が研究費への支出が少なくなっていることからしばらく難しそうですね。個人的には、hANPの開発の寒川先生、個人的に存じ上げているのでとってほしいなぁと思っております。
私、化血研という会社でワクチン作成をしている友人がいます。その方とお話していると、やはり日本は、不活化ワクチン(インフルエンザワクチン)や生ワクチン(おたふくかぜなど)は得意であるが、mRNAワクチンはかなり技術的に難しいし、高熱がでるし、国の予算も下りないので作成は難しいと当時おっしゃっていました。不活化ワクチンでコロナワクチンを作成することは可能であるが、日本国民に対して半年から1年間期間がかかって可能かどうか(残念ながら半年経過するとコロナウイルスは変異していると思います、、、、、)、とおっしゃっていました。mRNAワクチンのすごいところは、遺伝子が判明すれば2,3ヶ月で全世界へワクチン供与ができるほど短時間で大量作成ができるワクチンということです(実際に世界で130億回以上接種されたそうです)。最初作成されたときはマイナス230度で保存とかいっていましたのでそんな不安定なワクチン使い物になるのかなと思っていましたが、今や冷蔵庫保存で対応できるやっぱりすごいワクチンと思います。感染予防はどれほどの効果かはわかりませんが、重症化するリスク軽減や、最近も話題の感染後の後遺症(long COVID、コロナ後遺症)は軽減または発生予防ができるワクチンですので皆様、policyが特にないのであればぜひうちましょう。
ウイルスに対するワクチンは、ウイルスそのものを弱毒化したもの(生ワクチン)とか、ウイルスを鶏卵のなかで培養しそこからたんぱく質を精製する作業(不活化ワクチン)をしていました。たんぱく質はRNAから作られ、そのRNAはDNAから作られます。原理的に考えると、DNAあるいはRNAからでも、最終的にはたんぱく質を作ることができるはずと、カリコ氏たちは考えました。しかし、こういう発想は以前からありましたが、なかなか実現しませんでした。①過剰な炎症反応がでること②RNAが不安定なこと、の2点でした。
① カリコ氏らは、人工的にmRNAを合成する際、一部を別の物質に置き換えることで、課題とされていた「炎症反応」を避けられると発見しました。自分のRNAであるかのようにセンサーをだますことができ、炎症を防たげられました。
② -1. RNAを安定化するために2つの発見がありました。新潟薬科大の故・古市泰宏先生は約50年前、mRNAの先端に「キャップ」と呼ばれる構造があることを初めて報告しました。この構造があることで、mRNAが壊れにくくなり、たんぱく質がつくられる効率も大きく上がることが知られていて、新型コロナのmRNAワクチンにも使われることによって安定しました。
② -2.脂質ナノ粒子(LNP)とういう、医療生化学の分野で、DDS(drug delivery system)という有名な技術があります。mRNAはこわれやすい物質で扱いが難しいです。mRNAを閉じ込めて分解から守るカプセルのようなLNPは、改良が重ねられた結果、効率的に体内に入り、必要な場所でmRNAを放出するものになりました。
これらの発見、応用、技術と執念ともいえる並々ならぬ努力でこの世紀の大発明されたワクチンの開発で何百万人の方が助かったといわれています。カリコ氏、ワイスマン氏、ノーベル賞受賞おめでとうございます。